2025年6月10日
塩野義製薬株式会社DX推進本部データサイエンス部所属、データエンジニアの桂木です。 本記事では、営業領域のデータ整備とタイムリーな提供を実現することで、データの利活用の促進に成功した事例についてご紹介します。
医師を中心とした顧客への情報提供の質を向上させ、自社製品の浸透を通じて社会に貢献するためには、社内や顧客の情報をタイムリーに戦略に生かすということが非常に重要です。一方で営業関連データの種類は多岐に渡り、源泉もさまざまなので、それらデータを組み合わせて品質を確保しつつタイムリーに活用するには、データを収集、一元化しつつ常に分析可能な状態で蓄積することが不可欠です。更に営業領域は外部環境の変化に伴いビジネス要件の変化も速いので、その対応スピードも求められます。 そこでSHIONOGIでは業務部門とデータサイエンス部が密に連携し、ビジネス変化に迅速に対応し、データを提供できる体制を整えています。社内の様々な業務システムや社外のオープンデータ、ベンダーから購入した商用データをデータベースとして一元化し、それらデータを分析用に変換して蓄積し可視化する、という流れの大部分を内製化することで実現しています。
内製化を実現する上では業務部門とのコミュニケーションが重要です。営業現場のMRはどのような情報が必要なのか、それを本部スタッフ側が提供する上で課題となる点は何なのかを常に業務部門と議論しています。本記事ではその取り組みの中でも、内製化によりデータ整備とタイムリーな提供を実現し、90%以上のMRが日常的に活用している「営業ダッシュボード」の構築に関する取り組みについて紹介します。
営業ダッシュボードの構築
先述のように顧客への情報提供の質を向上するには、タイムリーなデータ活用が重要です。必要なデータとしては、売上実績や社内組織情報などの「社内データ」だけでなく、外部環境を把握するために社外データである「オープンデータ」やベンダーから購入した「商用データ」も不可欠です。
具体的に、社内データについては、販売品目・売上金額・営業組織情報とデジタルチャネル由来のデータ、オープンデータについては、国立感染症研究所が公開している感染症定点報告データやベンダーから購入した市場データが該当します。
これらの源泉は様々であり、データの粒度や結合Key、データ仕様が異なるため、当初はデータの取り込みや加工がしづらく、活用までに多くの工数や時間を要していました。そこで、MRが必要とする情報から逆算して必要なデータの粒度や内容を整理、ビジネス要件の変化によって変更が生じる箇所を特定し、データ連携がスムーズに行えるテーブルを設計しました。これによりデータ収集から提供までの時間を短縮し、更にビジネスの変化にも迅速に対応できるようになりました。MRに利用していただきやすいダッシュボードを作成することができ、現在では90%以上のMRが日常的に活用しています。
終わりに
私はデータエンジニアとして、営業現場の「データをすぐ見たい、朝イチで確認してその日の業務に活かしたい」といった声に応えるべく、データ収集からの鮮度を落とさずに、更にビジネス変化にも柔軟に対応しでデータを提供できる基盤の作成を目指しています。データの課題に対して、業務部門へのヒアリングを通してビジネスをキャッチアップし、その上でテーブル設計を行ったため利用しやすいデータとなり、営業ダッシュボードの活用も進んだと実感しています。またデータベース化し一元化したことで、業務部門側でのデータ取得・加工作業がなくなり、集計ロジックや抽出条件等の齟齬によって生じるリスクの軽減や、業務効率化にも繋げることができました。これからも顧客へ質の高い情報を提供すべく、データエンジニアの観点で貢献していきたいと思います
データエンジニアリング人材の募集
昨今、SHIONOGI社内でのデータ分析の需要は増加しており、データ活用を支えるデータ基盤を構築・運用する人材が必要とされています。データサイエンス部では、データエンジニアリング職の募集を行っています。
データ関連のスキルやご経験をヘルスケア領域のデータ基盤の構築・運用で活かしてみたい方は、以下のリンクから募集内容の詳細を確認ください。皆さまからのご応募をお待ちしております。